『カウンセリングとは何か 変化するということ』東畑開人|本の紹介

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はじめに

本書が想定している読者は専門家ではなく、カウンセリングを利用したことのある人、または「なんとなく気になっている」一般の読者です。著者の東畑さんは、カウンセリングの全体像を俯瞰し、その原理に迫るというこれまでにない本を書きたかったと語っています。その狙いどおり、本書はカウンセリングの入門書として非常にわかりやすく、内容のバランスも取れた一冊になっています。いま注目されている本書の魅力を、私なりにご紹介できればと思います。

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内容ざっくりまとめ

第1章では、「カウンセリングとは何か」を考えるにあたり、まずカウンセリングに対してよく向けられる二つの“容疑”が挙げられます。
①カウンセリングは誰でもやっていることだ。
②カウンセリングは宗教や占いみたいなものだ。
この2つの誤解を解くことで、①では社会の中でのカウンセリングの位置づけが、②では歴史の中でのカウンセリングの意味がそれぞれ浮かび上がってきます。

そして「カウンセリングとは何か」という問いへの答えが早くも提示されます。

“カウンセリングとは、心の問題で苦しんでいる人に対して、心理学的に理解して、それに即して必要な心理学的な介入を行う専門的な営みである。”
(東畑開人「カウンセリングとは何か 変化するということ」, 講談社, 2025, 第1章「カウンセリングとは何か 心に突き当たる」より)

やや硬い表現ですが、第2章を読むと「心理学的に理解して」の意味が明らかになり、第3・4章を読むと「心理学的な介入を行う」の部分の真意が見えてきます。章立ては次のとおりです。
第2章:謎解きとしてのカウンセリング
第3章:作戦会議としてのカウンセリング
第4章:冒険としてのカウンセリング
それぞれの章で実際のカウンセリング事例をたどりながら、「心とは何か」という根源的な問いに迫っていきます。

第5章では、本書の副題でもある「変化するということ」について語られます。第2〜4章で描かれたカウンセリングが心にもたらす変化は、次の2種類にまとめられます。
・生活を回復するための科学的な変化
・人生のある時期を過去にするための文学的な変化
そして最終的に「カウンセリングとは、人が破局を生き延びるために、科学的な変化と文学的な変化の両方をもたらす社会的な営みである」と再度結論づけられます。

感想

この結論はシンプルながらも、根拠の積み上げに説得力がありました。専門家ではない私でも、カウンセリングという営みの入口に立てたような感覚を覚えました。ほんの一端に触れただけかもしれませんが、それこそがまさに著者の狙いだったのだと思います。本書を足がかりに、次は分野を絞ってもう少し専門的な内容にも触れてみたいと感じました。

また、本書を執筆するに至った著者のモチベーションにも強く惹かれました。東畑さんは自身を「臨床心理学第4世代」と位置づけ、前の世代が広げてきた議論を整理し、次につなげる使命感を持っていると述べています。臨床の現場に誠実に取り組みながら、アカデミックな探究にも全力を注ぐ姿勢に、純粋に尊敬の念を抱きました。

本書に登場するカウンセリングのやりとりからは、目の前の相談者への深い優しさと、研究と経験に裏打ちされた冷静なまなざしの両方が感じられました。そのバランス感覚こそ、良いカウンセラーであることの証なのだろうと感じました。

さいごに

全体を通してフラットでやわらかな文体が印象的で、著者の研究へのまっすぐな情熱とにじみ出るような優しい人柄が感じられました。読者を丁寧にカウンセリングの世界へと導こうとする姿勢が伝わってきます。カウンセリング入門の一冊として、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

参考文献:東畑開人「カウンセリングとは何か 変化するということ」, 講談社, 2025

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