『不登校の9割は親が解決できる』小川涼太郎|本の紹介

はじめに

『不登校の9割は親が解決できる』の著者の小川涼太郎さんは「株式会社スダチ」の代表を務めてらっしゃいます。スダチは平均3週間で90%の不登校児を再登校に導く「スダチメソッド」で注目を浴びています。本書は発売から1年で約2万部の売上を突破し、2025年4月現在Amazonの「いじめ・不登校」カテゴリで1位を獲得しています。不登校関連の本を探せば1度は目にすることでしょう。
これから手に取る方にあらかじめお伝えしておきたいのは、本書はスダチメソッドの紹介・宣伝の色が強いということです。キャッチーな表現も多いため、冷静に読みつつ参考にすると良いかと思います。

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内容ざっくりまとめ

冒頭では「本当に学校に行かなくてもいいのか?」という問いが提示されます。近年は多様性が尊重され、「無理して学校に行かなくていい」という考えも広まっていますが、小川さんはそれを危険だとしています。
学校に行かない場合のデメリットとして、通信制などでは学校で得られるのと同等の教育や機会を得るのが難しいこと、そして決して安くないコストがかかることが挙げられています。はっきりとは書かれていないものの、基本的には「学校に行くべき」という立場です。

続いて「見守るだけでは解決しない」「不登校の原因は追究しなくていい」という主張が登場します。近年、子どもが不登校になったと言うと「無理に学校に行かせず、子どもの気持ちに寄り添いましょう」とアドバイスされることが一般的です。しかし小川さんは、見守っているうちに子どもがスマホやゲームに依存し、不登校が長期化するケースが多いと指摘します。不登校の原因とされる出来事も、実際には単なるきっかけにすぎず、そこだけにアプローチしても解決しないとも述べています。

では、どうすればいいのか?小川さんは「正しい親子関係の構築」と「子どものデジタル依存の解消」がカギだと語り、スダチメソッドならそれが実現できると主張します。3週間で再登校を目指すための具体的な方法として、家庭内のルールづくり、声かけの工夫、親の心構えなどが紹介されます。

感想

本書の言うとおり、たしかに近年は「学校に行かなくてもいい」「子どもには子どものペースがある」といった考え方が主流になっています。その中で「学校に行くべき」と強く打ち出す本書は、保護者さんに新たな視点や勇気を与えてくれるかもしれません。不登校が長引く前に、学校に行くようもう少し背中を押すべきだったと後悔される方が少なくないのも事実です。

一方でスダチメソッドの有効性を主張するあまり、
・子どもの気持ちに寄り添い、元気になるまで見守ること
・デジタル機器の活用
・通信制高校やフリースクール、ホームスクーリング
のデメリットだけが強調されるのが気になりました。言うまでもありませんが、これらが最適解として大変な救いになっているご家庭も多くあります。本書はこれらの良い面をほとんど紹介しておらず、一元的な論調が残念でした。

また、「学習障害のある子どもにも基本的には同じ方法で再登校を促せる」としている点には疑問が残ります。現状として通常学級ではサポートが十分でないことも多く、お子さんが学校で感じる苦痛や孤独は深刻です。学習障害のあるお子さんには、特別支援学級や学校外でのサポートを含めた環境整備が欠かせません。本書が言うように家庭内で親子関係を整えれば大丈夫、とは言いきれないと感じました。

さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。本書はメディアに取り上げられるなど目にする機会も多く、お子さんが不登校になった時に最初に手に取りやすい一冊かもしれません。今の時代、「無理に学校に行かなくていい」という声が当たり前になっているからこそ、あえて逆の立場をとる本書から得られる学びは大いにあると思います。
一方で「短期間で再登校が可能」というメッセージが、お子さんを思う保護者さんの不安な気持ちに強く響きすぎる点には注意が必要です。このブログでは他にもいろいろな本や情報を紹介しています。様々な視点から選択肢を集め、ご家庭に合った判断ができるよう願っています。

参考文献:小川涼太郎「不登校の9割は親が解決できる」, PHP研究所, 2024