『小学生不登校 親子の幸せを守る方法』石井しこう|本の紹介

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はじめに

本書を手にとったのは、副題の『400人の声から生まれた「親がしなくていいことリスト」』という文言に惹かれたからです。

近年は不登校に向き合うご家庭が増え、それに伴い「あれをすべき」「これもした方がいい」といった情報を多く見かけます。一方で、あれこれと手を尽くして疲れ切ってしまうと、今度は「子どもが安心できるように、まずは親が幸せでないと」といった意見が待ち受けており、どうすればいいのか困ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私自身も日頃の支援活動の中で、保護者さんが我が子のためにと奔走し、その結果辛くなってしまう姿を見ることがあります。だからこそ“しなくていいこと”を整理できれば、保護者さんの負担を少しでも軽くできるのではと思いました。

著者の石井しこうさんは、不登校の子どもや保護者など400名以上に取材してきた不登校ジャーナリストで、ご自身も中学生の頃に不登校を経験されています。最近では「不登校生動画甲子園」や「卒業式をもう一度」といったイベントでも話題になりました。

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内容ざっくりまとめ

石井さんは、親子が幸せに過ごすためには、親が「頑張らなきゃ」と肩に力を入れすぎないことが近道だと述べています。「親がしなくていいことリスト」として、親の「頑張らなきゃ」という気持ちが結果的に子どもを追い詰めてしまう“あるある”がまとめられています。

「親がしなくていいことリスト」
①「出席」「欠席」にはこだわらなくていい
②学校によく思われなくていい
③同伴登校はしなくていい
④親だけで解決しようとしなくていい
⑤家族の歩調は合わせなくていい
⑥無理な自宅学習はしなくていい
⑦会話に目的はなくていい
⑧子どもの苦しみを自分に置き換えなくていい
⑨ゲームは禁止にしなくていい
⑩子の居場所は親が決めなくていい

たとえば「⑥無理な自宅学習はしなくていい」では、多くの子どもは1年ほどあれば義務教育の主な学びを取り戻せるため、本人の気持ちが整う前に無理に勉強させる必要はないと書かれています。むしろ不登校が始まった頃は精神的に苦しい時期なので、勉強から距離を置くべきだと言います。『どうぶつの森』や『マインクラフト』などのゲームで自然に学んだり、やる気が出たタイミングでAI教材を使ったりする方法も紹介されています。

また「⑨ゲームは禁止にしなくていい」では、子どもの回復にはデジタルフリー、つまりゲームを自由にさせることが早道だと述べられています。親は「ゲームとの付き合い方を学ばせなきゃ」と焦る必要はなく、不安や自己否定感が強い時にはゲームが支えになることも多いため、あたたかく見守る姿勢を勧めています。ゲームを自由にさせることに抵抗がある親向けには、「本人が決めたルールを尊重する」という児童精神科医の提案も紹介されています。

感想

・「今日だけ頑張って登校してみよう」と言わない
・里帰りは「希望者だけで」が原則
・お好み焼きを焼けたら勉強を始めるタイミング

こうした具体的なアドバイスは、多くの方に取材してきた石井さんだからこそ伝えられるもので、読んでいて納得感がありました。また、不登校経験者同士で「どの時期に勉強した?」と話題になるというエピソードは、当事者だからこそ語れる視点で新鮮でした。

一方で、アドバイスの根拠として科学的なデータが示される箇所もあるものの、全体としては石井さん自身や取材した方の経験・感情が中心になっている印象もありました。

“「行き渋り」や「不登校」が始まったとき、学校や家庭内でもさまざまな壁に直面すると思います。そんなとき、この本を手にとって「石井さんがこう言っていた」と周囲にそのまま伝えてみてください。解決へのヒントを得ることができるかもしれません。”
(石井しこう「小学生不登校 親子の幸せを守る方法」, KADOKAWA, 2025, 「まえがき 親と子の幸せだけを考える」より)

というように、「石井さんの本に書いてあったから」という理由で行動しても大丈夫、という言い回しがたびたび登場します。著者を信頼できる方には心強い表現ですが、人によって受けとり方は分かれるかもしれません。

タイトルから私が勝手に期待していたのは、お子さんにできる最低限のサポートを示しつつも“しなくていいこと”を整理し、「親が避けられる負担は避けましょう」と寄り添ってくれるような内容でした。実際に読んでみると、さまざまな角度から“しないべきこと”を提示し、子どもの力を信じて無理に学校へ戻らせないという選択を後押しする本だと感じました。

さいごに

「子どものために色々やりすぎてしまった」「手を尽くしたつもりなのに状況が変わらない」という方にこそ、あえて“やらない”方向に視点を調整してくれる本だと思います。また、「無理に学校に行かなくていい」という近年よく耳にする考え方に沿った内容で、不登校の当事者たちの声にも触れられます。「子どもは学校に行くのが当たり前」と捉えている方にも、理解を広げる一冊になるかもしれません。

参考文献:石井しこう「小学生不登校 親子の幸せを守る方法」, KADOKAWA, 2025

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